HOME > コンテンツページ

栽培免許について


栃木県の麻畑


 麻は、縄文時代から第二次世界大戦前まで誰でも自由に栽培することができた農作物である。最初の麻の法的規制は、1930年「麻薬取締規則」であった。この規則は、1925年第2あへん条約の発行に伴い制定され、印度大麻草(カンナビス・インディカ)とその樹脂を規制した。日本では、繊維用の大麻草(カンナビス・サティバ)栽培であり、その規制は、麻農家には全く影響がなかったのである。


 1945年8月15日の戦争終結直後の10月12日に連合軍総司令部(GHQ)は、日本政府に麻薬に関するメモランダム(覚書)を発行し、ポツダム宣言を受けた「ポツダム省令」にて同年11月24日付省令の「麻薬原料植物の栽培、麻薬の製造、輸入及び輸出等禁止に関する件」によって、麻を麻薬と定義した上で、その栽培、製造、販売、輸出入を全面的に禁止した。


 当時の日本では、繊維原料としてはもちろん、魚網や下駄の鼻緒などの需要は多く、麻の栽培は不可欠であった。当時の農林省は、「大麻は日本の主要作物である」といって、再三の交渉の結果、この禁令は解除され、1947年4月に「大麻取締規則」厚生・農林省令第1号が制定された。


 翌1948年7月、前述のポツダム省令を集大成して医師が取り扱う「(旧)麻薬取締法」、と農家向けの「大麻取締法」が別々に制定された。この法律により麻の栽培に関しては、都道府県知事の免許が必要となった。1950年時点では、栽培者25118名、作付面積4049ha、その用途は、下駄の鼻緒52%、畳糸32%、魚網12%、荷縄4%であった。


大麻取締法ができるまで

法律でどこが規制されているのか?

麻薬に関する単一条約 第28条2より
この条約は、もっぱら産業上の目的(繊維及び種子に関する場合に限る)又は園芸上の目的のための大麻植物の栽培には、適応しない。(1961年採択)


大麻取締法 第1条
この法律で『大麻』とは、大麻草(カンナビス・サティバ・エル)及びその製品をいう。ただし、大麻草の成熟した茎及びその製品(樹脂を除く。)並びに大麻草の種子及びその製品を除く。(1948年施行)


 日本の大麻取締法上の位置づけ

  ※大麻草の栽培には都道府県知事の免許が必要となる


 国際条約では、産業利用の目的は特に制限されてないが、国内では大麻取締法によって規制されている。日本では「大麻」は、法律上、大麻草の葉と花穂のことであり、これを所持することが大麻取締法で違法にあたる。マリファナとは、大麻草の葉や花穂を乾燥させて、タバコのように喫煙できるようにしたマリファナ煙草のことである。上記の表を見ると、合法か違法かという区分を取り除けば、伝統、産業、医療、嗜好と非常に幅広い活用用法があるにも関わらず、一般的には、大麻というと嗜好品分野のことしか認識されていない。   

栽培には、都道府県知事が許可する大麻取扱者免許が必要であり、農業者が取得する「栽培者免許」及び大学や麻薬取締関係者が取得する「研究者免許」の2種類ある。免許の有効期限は、1月1日から12月31日で毎年更新する必要がある。
申請窓口は、各当道府県の薬務課又は保健所であり、厚生労働省発行の文書によって次のような許可基準の目安がある。


大麻取扱者免許に関する厚生労働省発行の文書

 平成10年7月21日愛知県知事が出した大麻取扱者免許交付却下処分に対する審査請求に係る裁決書(平成11年1月14日厚生省収医薬第15号)

「種子や繊維を農作物として出荷したり、伝統的な祭事に利用したり、栽培技術を代々継承したりするなどの何らかの社会的な有用性が認められるものでなければ、大麻の栽培を必要とする十分な合理性がないものとして、免許権者の判断により免許申請を却下することができると解するのが相当である。」
 平成13年3月13日付医薬監発麻第294号の通知
「その栽培目的が伝統文化の継承や一般に使用されている生活必需品として生活に密着した必要不可欠な場合」
 厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課.麻薬等関係質疑応答集(平成21年3月版)
Q389. 大麻取扱者の免許交付審査における注意点を教えてください。


大麻取締法には、法律上その目的規定は明文では規定されていませんが、麻薬及び向精神薬取締法第1条や覚せい剤取締法第1条と比較考量すると、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止し、もって公共の福祉の増進を図ることを目的としていると考えます。よって、この目的に反するものでなければ、免許することになりますが、具体的には、


@ その栽培や研究の目的が、法の趣旨と照らして妥当であるか。特に法が、免許制度により原則として大麻の栽培等を禁止している趣旨にかんがみ、その栽培等が国民にとって必要不可欠なものであるかどうかなど、禁止を除外するに値するものであるか否か。
A 盗難防止対策が十分になされるかどうか。
B 目的以外の葉や茎が適切に処分される体制が整っているか。
などを十分検討していただき、適当でない場合には免許を与えないことが妥当と考えます。


栽培免許に必要な書類と交渉

 大麻取締法では、大麻取扱者免許を与えられないものに@麻薬、大麻又はあへんの中毒者、A禁錮以上の刑に処せられた者、B成年被後見人、被保佐人又は未成年者の3点が定められている。法律上は、これらの欠格事由がなければ誰でも免許が取得できるようになっているが、厚労省の文書で栽培目的を限定するような指針が示されている。前述の通知を見ると「伝統工芸」及び「社会的有用性/生活必需品」の2点が免許取得の基準となるということが読み取れる。


 大麻取扱者免許は、都道府県の行政手続条例で免許申請の審査基準や書類の様式が定められている。県の薬務課に訪問してそれらの書類一式をもらう必要があるが、たいていの場合は門前払いを受ける。なぜならば、大麻を薬物として規制しているところが厚生労働省管轄であり、農業を推進する農林水産省管轄でないことがネックとなっている。しかし、法律の細則を定めた「大麻取締規則」では、厚生・農林省令第1号であり、本来は共同管轄であったにもかかわらず、それが機能していないのである。


大麻栽培者免許申請に必要な書類リスト
1.申請書 各都道府県の薬務課でもらえる
2.麻薬、大麻又はあへんの中毒者でない旨の医師の診断書
3.申請者の履歴書
4.栽培場所を中心とした平面図、施設平面図および現地案内図
5.大麻草の盗難防止の方法を記載した書類
6.栽培目的、使用目的を記載した栽培計画書、販売計画書
7.大麻草を抜き取った後の繊維と種子以外の物の処分計画書


 申請書には、栽培目的を書く欄があり、@繊維採取またはA種子採取のどちらかを選ばなければならない。繊維採取は、密植栽培であり、種子採取は株間を空けた栽培で全く異なるので、それを考慮しなければならない。両方利用したい場合でも主目的の方を書いているケースがほとんどである。


最も重要なことは、麻を農作物として栽培し、加工し、販売するという一連の流れを考えて事業計画を立てられるかどうかがポイントとなる。また、行政側は必ず「なぜ輸入原料を利用せずに、国内で栽培しなければならないのか?」ということを聞いてくる。県の薬務課とは、地産地消とか農業で地域活性化という視点がないため話が噛み合わないこともしばしばある。過去に新規に免許を取った事例をみると、行政当局と粘り強く交渉して「不許可にする理由がないので免許を出さざるを得ません」となっている。


北海道の独自の課題

1)低THCの品種の確保
2)THC検査体制の確保
3)大規模な試験栽培の実施
4)ヘンプを使いたい企業(食品や建築会社など)との連携
5)道庁の大麻取締法の運用改善(新規で免許を認めたくないという姿勢の転換)
6)野生大麻の調査(1970年代に実施しただけ)
7)世界での大麻を巡る規制緩和の動きと道民への世論喚起


これらの論点は、構造改革特区、北見産業用大麻栽培特区、産業用大麻可能性検討会の検討課題でもあります。詳しくは「これまでの活動」ページを参照し、「レポートと資料」のページにあるレポートなどにあります。