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北海道にも縄文時代からあった麻

 約1万年前の縄文時代草創期の福井県小浜市の鳥浜貝塚から大麻の縄が出土されています。種子(麻の実)では、千葉県館山市の沖ノ島遺跡から出土しています。これらの出土は考古学において世界最古のものと言われています。実は、北海道でも千歳市のキウス4遺跡、江別市の江別太遺跡からそれぞれ種子が出土しています。


 北海道のアイヌ民族で、麻を利用したものは特になかったと言われていますが、北海道にも縄文時代からの利用の痕跡があることが確かなようです。これからの発掘・発見に期待できるかもしれません。


引用:千葉県沖ノ島遺跡から出土した縄文時代早期のアサ果実(2008)

開拓使は麻を植えた

 北海道における麻の最も古い記録は、松前蝦夷記(1717年・享保2年)です。「松前西東の地にて雑穀、粟、稗、麻、多葉粉総って畑物土地に出来申候」と見られるが、和人地における大麻草の耕作を示しています。


 明治6年に北海道に屯田兵制度ができると、養蚕と大麻草を授産産業として奨励しました。開拓使がおかれて初めて耕作されたのは、琴似・山鼻兵村(現・札幌市西区)であり、明治11年、屯田兵本部が栃木県産の種子を使って30町歩耕作したと記録されています。明治初期において、道内の栽培75%は札幌区と石狩郡で占められ、中でも当別村はその中心であったようです。当時の繊維の多くは、イワシやニシンの漁網用に製造されていました。


 引用:大麻の研究(1937年)


 明治初期に函館の五稜郭で新政府と最後まで戦った榎本武揚は、ロシア公使時代に麻の栽培を自ら行い、北海道の麻産業に尽力しています。


 明治9年に農務省技師の吉田健作が渡欧し、帰国後に大麻紡績の工業化を計画し、北海道製麻会社が明治30年に設立し、はじめに大麻草を中心とし、その後に亜麻の生産に力を入れるようになりました。札幌農学校(現・北海道大学)では、南(池田)鷹次郎の実験実習報告書があり、大麻草栽培と亜麻栽培は正式な教科内容であったことが記されています。


 日清戦争後の明治40年に北海道製麻と日本製麻が合併して帝国製麻を創立しています。これは今でもリネン(亜麻)製品を販売している帝国繊維の前身の会社でした。第1次世界大戦、第二次世界大戦中は、軍服、ロープ用などの軍需用に栽培が盛んに行われました。この頃の亜麻の栽培記録は多数残っていますが、大麻草の記録は極めて少なく、資料の掘り起こしが望まれています。


参考文献
福山和子.北海道の麻事業の歴史概説.民俗服飾研究論集.1987,2,p.23-26.
永田志津子.北海道における麻繊維生産の推移について.静修短期大学研究紀要.1988, 19,p.53-59.


開拓使の植えた麻が野生化した

第二次世界大戦敗戦後の1948年に大麻取締法ができてからは、栽培されずに放置された大麻草が野生化しました。


1969〜1973年にかけて北海道立衛生研究所は、道内の野生大麻の調査を行い、マリファナの主成分であるTHC濃度がTHC0.56〜5.73%、平均1.26%であることを明らかになっています。また、野生大麻は、年間100〜200万本ぐらい抜き取りされています。

最近の北海道の産業用大麻を巡る動き まとめ


2002年のヘンプカー・プロジェクトをきっかけに、北海道北見市の産業クラスター研究会オホーツクが2003年からこのテーマに取り組み、2005年に栽培免許を取得し、麻の先進地への視察ツアー(ドイツ、フランス、栃木県、長野県、韓国、カナダ)を実施しました。また、2008年8月8日に北海道庁から「産業用大麻栽培特区」が認定され、新産業の創出に向けた準備が進められました。その特区に認められたときの文書から麻を推進するメリットを次のように述べています。

1)公共事業の減少に伴う、北見地方の基幹産業である建設業界の業態転換が求められている
  → 麻の栽培および工業製品の製造は、業態転換と雇用の確保が期待できる。

2)離農や減反政策による耕作放棄地の増加している(道内に1万ヘクタールある)
  →  工業生産のために500ヘクタールを1ロットとすると北海道という地域でないとまとまった農地確保の面から実現が難しい。

3)窒素肥料過多による硝酸性窒素による地下水汚染が進んでいる
  → 麻には土壌窒素分のクリーニングクロップの効果が期待でき、道の農業試験場において実証されている。
  
4)麻の栽培は、110日で4メートルの生長によって二酸化炭素の固定化ができる
  → この固定量は、道内の森林より約8倍もの固定量がある。 


  
これらのメリットを一言でいうと、麻は、北海道の次世代作物としての可能性に期待がかかっているということです。


<これまでの北見市を中心とした主な動き>

02年 ヘンプカープロジェクト 最終ゴール横浜で出会う
03年 講演会の実施
    ドイツ視察ツアー実施 畑からベンツまで
04年 産業クラスター研究会・麻プロジェクト 産官学連携でスタート
05年 大麻栽培者免許取得(ハーブ園の会社)
06年 道立農業試験場での研究スタート(大麻研究免許取得)
    フランス視察ツアー実施 種子管理、建築、プラスチックまで
07年 事業可能性基礎調査を実施(中小企業組合の補助事業として)
    国の構造改革特区申請 残念ながらC判定(特区ならず)
08年 産業用大麻栽培特区の認定(道庁より)
    第2回アジア大麻産業国際会議に参加(韓国視察)
09年 特区記念シンポジウム開催 200名規模
10年 カナダ視察、ヘンプマルシェ(麻市)を開催
11年 ヘンプカープロジェクト2011北海道を実施
12年 北海道ヘンプネット発足
13年 北海道庁農政部で産業用大麻可能性検討委員会(有識者として参加)が開催
14年 道議会で産業用大麻に関する質疑が行われた
   大麻研究者免許取得(東川町の松家農園社長および菊地)
   一般社団法人北海道ヘンプ協会設立
15年 北海道ヘンプ協会がEIHA(ヨーロッパ産業用ヘンプ協会)の準会員に加入
    フランス視察ツアー実施
16年 オランダ・ドイツ・ヘンプ産業視察ツアー実施
17年 日仏ヘンプ国際シンポジウム(札幌、東京)を企画
18年 中国黒龍江省ヘンプ産業視察ツアー実施